それはまだ、この国に名前がついていなかった時代のこと。
東部社会は、文明の発達と土地の整備により、平和で秩序ある世界を実現しつつあった。
だが、それと同時に、冒険と闘争は失われつつあった。
金脈発掘、肥沃な土地の開発、新発見…… 夢を追う者たちはみな、西部へと夢を馳せた。
少女ガンマン・ヴァネッサと、その執事・セシル。
ふたりの16才もまた、大開拓時代の真っ只中にその身を投じるのだった……
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「常識なんてのは東部の言葉だぜ。ここがどういうところだか、わかってねえようだな」
継母に東部の屋敷を追い出され、西部行きの列車に乗り込んだ少女ガンマン・ヴァネッサ。
先代執事の命に従い、彼女と旅をすることになった少年執事・セシル。
ふたりの旅は、悪党どもの乱入によって幕を開けた。
機関銃をあやつる巨漢、
ウェディングドレス姿のガンマン、
100人の手下を従える賞金首・マードック。
猛スピードで走る西武鉄道を舞台に、ガンスモークたちこめる戦場を駆ける少年少女。
誰が敵で誰が味方か!? 2部構成の連作篇。
「西部へようこそ、お嬢さん!」
自然に身体を適応させて進化した民・魔族。
ミノタウロスの一団に列車をひっくり返された2人が流れ着いたのは、 鬼の一族が住まう町。
町を騒がす魔族殺しを探して、保安官・グレンジャーとともに<入らずの森>に踏み込んだ2人。
彼らを待ち受けていた犯人は、意外な人物だった。
「さあ、殺し合いだ。名乗らないのかい? お嬢ちゃん」
「ヴァネッサよ。ヨロシクね」
「ヨロシク、ヴァネッサ。そしてサヨウナラ、だ」
東洋の刀を構えるセシルの前に立ちはだかったのは、自分そっくりの少年……。
異国の地に、サムライの魂が甦る!
「かわいいから」と、路銀をはたいてヴァネッサが買ってきたのはトーテムポール。
食費にも窮し、出稼ぎに2人が赴いたのは、サンタ・ビレッジ。
聖夜に5ドルのプレゼントを配って回るボランティア団体、『サンタクロース協会』の本拠地だった。
そこで2人が巡りあったのは、悲しき愛の物語。
「行くな! 命令よ!」
「聞けません」
雪に舞う蒸気ソリ、きらめくナイフ、忍び寄るサンタクロース。
そして真っ二つになるトーテムポール!
ファームディの町で開催されていた、料理コンクール。
決勝戦で活躍している黒衣の料理人の正体はなんと賞金首・マードック!
改心したという彼の言葉に感動するヴァネッサ、 疑惑のまなざしを向けるセシル。
チョコレートをテーマにした決勝戦の行方は!?
少女の嘆願、光るメス、暗躍する機械人形。
「仮面があるからって、あんなじゃじゃ馬を!」
「大丈夫、ああ見えて料理は得意だそうだ」
「料理は創作だぞ? 女にできるもんか!」
「あら、じゃあアンタはパパのミルクで育ったの?」
2月上旬の配信時期に合わせ、作内に登場したチョコレートのレシピも掲載した異色の番外編!
監獄の街で、いきなり逮捕されてしまった2人。
「この状況を何とかできるのは彼女だけだ」
セシルが電報を送ったのは、保安官・グレンジャー。
先を急ぐ彼女の前に現われたのは機械人形の群れだった。
深夜の墓地に舞い降りる吸血鬼・スマイル。
「キミ、他に連れは?」
「宿場に同僚が一人」
「行って。ここはボクが相手する」
血まみれの町を突き進むグレンジャー。
友を救うため、4本のサーベルがきらめき踊る!
嵐は、今まさに町を呑み込もうとしていた。
その鼻っ面に、カウボーイ姿の少女が拳銃を手に立ちふさがった。
背後には小屋。中では最後の生存者・ルーシーが神への祈りを捧げている。
小屋が吹っ飛んだらおしまいだ。ルーシーも、馬車も、自分の運命も。
愛銃と口づけを交わし、ヴァネッサは銃口を持ち上げた。
「神も奇跡も信じない。ガンマンが信じていいのは、自分の銃だけ」
竜巻が押し寄せる。
「そうよね、パパ」
『天使』と呼ばれる巨大な円盤が突き刺さった街、ロサンジェルス。
路銀を稼ぐため、西部芸術コンクールに絵画を出品しようというヴァネッサ。
弱弱しく首を振るセシル。
「僕は絵が描けないんですよ」
芸術家・オルソンのもとで絵の講習を受ける2人に、変化が訪れる。
無口なメイド、ヴァネッサの寝床に立つ影、急降下するバンパイア。
(嗚呼、この理由もわからない不条理な殺し合いが……今は、心地良い)
西部の歴史が始まったこの街で、運命の邂逅が幕を開ける!
ラファエル・バレーの河川敷に咲き並んでいたのは、東洋の花『サクラ』。
夜桜を背にキャンプする2人。
語られるのは、セシルの過去。
サクラを見上げるセシルの瞼に浮かぶのは、師・セバスの庭園。
恩師と旅がもたらした成長。自分の秘めた想いを告白するセシル。
そして居眠りするヴァネッサ!
「僕は人形じゃない。セシルだ」
3つの同じ影が、月下の花吹雪に哀しく舞い踊る……。
情熱などとうに忘れていた。彼女の笑顔を見るまでは……。
西部に君臨する魔族の王、吸血鬼・スマイルの過去が明らかにされる。
彼が訪れたのは、西部の果て。すべては彼女との約束を果たすために。
そこで出会ったのは、4人のメイドを従える老紳士。
語られるは、歴史の元凶。舞い踊るは、鋼鉄の刃。
人知を超えた能力者たちの戦いの果て、犠牲者になるのは誰なのか。
惨劇はこれで終わるのだろうか……?